NDIR方式とは
NDIRとは、Non Dispersive InfraRed(非分散型赤外)の略で、NDIR方式はそれぞれのガスが持つ特有の吸収波長領域を利用したガス濃度の計測方式です。
例えば、二酸化炭素分子(CO2)は赤外領域の波長4.26µmを吸収します。気体中を透過する赤外線量は、そこに含まれる二酸化炭素の濃度に依存するため、この現象を使って二酸化炭素濃度を数値化する事が可能となります。
ガス濃度を測定する方法は多々ありますが、それらのほとんどが化学変化やセンサー自体の変化が伴うため、測定対象のガスにも変化を及ぼします。それらと比較し、吸光度を測定するNDIR方式では対象ガスに変化を及ぼすことなく、濃度測定することが可能です。
NDIRセンサーの光源の種類と違い(LEDと白熱電球の違い)
NDIR方式を用いてガス濃度計測をするための重要な項目の一つに光源の選定があります。
光源を選択する際には、十分な光量が得られる事が最も重要になります。
多くのNDIR方式CO2センサーの光源としてタングステン・フィラメントを用いた白熱電球が使用されています。
その理由は十分な光量が得られるためです。
波長帯域も可視光域から近赤外、そして中赤外域まで広範囲に渡っています。
特にCO2センサーに必要とされる波長:3µm~5µmでも比較的大きな放射出力が得られます。
この特長から、二波長方式センサ(吸収波長だけでなく、吸収の影響を受けにくい参照波長も使用する方式)の光源として使用する場合は、1つの白熱電球(単光源)にてシステムを構築することが可能です。
一方、白熱電球以外の光源としてはLEDがあります。LEDはセンサーを小型化および低消費電力化する事が可能になりますが、放射出力がやや小さく、出力される波長域も限定的であるため、二波長方式のNDIRセンサーを構築するためには、2つのLED光源が必要となります。
白熱電球とLEDは、それぞれ特長が異なるため、それぞれの特長を考慮した光源選択が必要になります。
NDIRセンサーに白熱電球を使うメリット
CO2の検知や室内環境の濃度測定を行うセンサーに使用される赤外光源ですが、 LEDではなく白熱電球を選択するメリットについてご紹介します。
※詳細な仕様については、「製品ラインナップ」のページをご覧ください。① 中赤外波長域での放射出力
白熱電球はLEDより変換効率が悪いという点がたびたびデメリットとして挙げられます。しかし、それは電力を可視光線に変換する際の効率であり、赤外領域での変換効率は白熱電球の方が優れています。白熱電球がNDIR方式のガスセンサー光源として用いられる理由はここにあります。
NDIR方式のガスセンシングでは、光源の赤外出力が高いほど高精度なガス濃度測定が可能になります。高精度なCO2センサーには、中赤外波長領域の高出力白熱電球が用いられています。
当社の製品は、特に高精度が要求されるプラント向けCO2センサーに多く使用されています。
② 出力波長域が広い
白熱電球の特長として、赤外波長域の出力が広範囲(近赤外から中赤外まで)であることが挙げられます。この特長により、通常複数の光源が必要になる仕様に対しても単光源にてシステムを構築することが可能になります。
例えば、NDIR方式CO2センサーには、測定精度の長期安定化のために、目的とするガスの吸収波長だけでなく、ガスの吸収の影響を受けない参照波長もセンシングするものがあります。二波長式センサーと呼ばれ、このセンサーには2種類の検出器が必要になります。波長域の広いランプであれば、単光源でその機能を満たすことが可能となり、システム全体の低コスト化が実現できます。
CO2センサー以外で広範囲な赤外線波長域が必要なアプリケーションとして、近赤外分光法を用いた成分分析器があります。近赤外分光法は、測定対象物に近赤外線を照射し、その吸収度の変化を解析することで、非破壊・非接触で対象物の成分を測定します。より正確な測定のためには、より多くのデータが必要なため、広範囲な近赤外波長域での出力が求められます。
白熱電球は近赤外分光法向けの最適な光源として数多く使用されています。
③ コストメリット
安価なイメージのあるLEDですが、中赤外域の赤外光源においては白熱電球の方にコストメリットがあると言われています。
押野電気のNDIRセンサー用ランプの特長
当社は、航空機向け自動車向けランプ、特に白熱電球の製造において長年にわたる数多くの実績があり、これらの分野で培った独自の製造技術を用いて、高精度な小型白熱電球(SML:サブミニチュアランプ)製造を得意としています。
自社製造の多様な形状のフィラメントとガラス・サイズを組み合わせた特別仕様のNDIRセンサー用ランプの提案が可能です。
加えて、厳しい環境にも耐えられる品質、且つ価格競争力がある製品を提供が可能です。
NDIRセンサー用ランプの用途
CO2測定
自動車の排ガス測定
車内・室内環境のモニタリング
ガス・火災検知
アルコール検知
冷媒ガス・温室効果ガス計測
など
NDIRセンサー用ランプの使用例
NDIR方式のガスセンサーモジュールは、各メーカー様によってその設計(構造)が大きく異なります。
ガスセルの構造や赤外光源(ランプ)と赤外線センサーの配置について、以下に代表的な使用例を紹介します。
① チューブ型のガスセルの場合
チューブ型のガスセルはシンプルな構造で、ランプと赤外線センサーがチューブの両端で対面になるように配置されます。
ランプ先端から放出された赤外光線が一直線にガスセルを通過し、反対面の赤外線センサーに到達します。
ガスセル構造の一例(イメージ図):
② 円筒型のガスセルの場合
円筒型のガスセルにおいては、ランプと赤外線センサーを一直線上に配置せずに、ガスセル内の反射ミラーなどを用いた非直線的な光路が用いられるケースが多いです。
ランプから放出された赤外光線が反射ミラーで方向を変えながらガスセル内を通過し、赤外線センサーに到達します。
ガスセル構造の一例(イメージ図):
③ ボックス型のガスセルの場合
ボックス型のガスセルにおいては、ランプと赤外線センサーが隣接する位置に配置されるケースが多いです。
その場合、ガスセルの内壁が反射ミラー状になっており、ガスセル内をU字に通過するような光路が用いられます。
ランプから放出された赤外光線は反射ミラーで方向を変えながらガスセル内を通過し、赤外線センサーに到達します。
また、下図のようにランプの先端ではなく側面から放出される赤外光線を主に用いることが多いです。
ガスセル構造の一例(イメージ図):